甲状腺機能低下症とAGA

甲状腺機能低下症がAGA（男性型脱毛症）に及ぼす影響

甲状腺機能低下症（Hypothyroidism）は、甲状腺ホルモン（T3・T4）の分泌が不足することで代謝の低下を引き起こします。
このホルモンの低下が直接的・間接的にAGAに影響を与える可能性があります。

1. 甲状腺ホルモンと毛髪の関係

甲状腺ホルモン（T3・T4）は、毛包の成長・代謝・血流に関与しています。
特に、T3（トリヨードチロニン）は毛包の細胞増殖を促進し、健康な髪の成長を助ける働きがあります。

甲状腺機能低下症による脱毛のメカニズム

• 毛周期（ヘアサイクル）の乱れ
  • 成長期の短縮 → 髪が十分に成長せず、細く短い毛が増える
  • 休止期の延長 → 抜け毛が増加
• 毛母細胞の代謝低下
  • 栄養供給が低下し、髪が細くなる（軟毛化）
• 皮脂分泌の減少
  • 頭皮の乾燥やフケの増加 → 炎症が起こりやすくなり、脱毛が加速

【重要】 甲状腺機能低下症では、びまん性脱毛（全体的な抜け毛）が多いですが、
これがAGAの症状を悪化させる要因にもなります。

2. DHT（ジヒドロテストステロン）との相互作用

AGAはDHT（ジヒドロテストステロン）による毛包のミニチュア化が主な原因です。
甲状腺機能低下症がDHTに影響を及ぼす可能性があります。

甲状腺機能低下症によるDHTの影響

• 甲状腺機能が低下すると、テストステロンの代謝が遅くなる
  • → DHTが長く体内に残るため、毛包のダメージが増大
• 甲状腺ホルモンは、5αリダクターゼの活性を抑制する働きがある
  • → 甲状腺機能が低下すると、5αリダクターゼの抑制力が弱まり、DHTの産生が増える可能性

【ポイント】

甲状腺機能低下症があると、DHTの影響が強まり、AGAが進行しやすくなる可能性があります。

3. フィナステリド・デュタステリドの影響

AGAの治療薬であるフィナステリド・デュタステリド（5αリダクターゼ阻害薬）が、甲状腺機能に影響を与える可能性があります。

• フィナステリド
  • 甲状腺ホルモンのバランスを変える可能性がある（完全なメカニズムは未解明）
• デュタステリド
  • 一部の報告では、甲状腺ホルモン（T3・T4）のレベルを低下させる可能性が示唆されている

【注意点】

甲状腺機能低下症がある人は、AGA治療薬の影響で甲状腺ホルモンのバランスがさらに崩れる可能性があるため、医師と相談しながら治療を進める必要があります。

4. 間接的な影響：血流と栄養供給の低下

甲状腺機能低下症では、全身の血流が低下しやすく、これが頭皮の血行不良を引き起こします。

【ポイント】

血流低下はAGAを悪化させる要因となるため、甲状腺機能低下症の治療を行うことでAGAの進行を遅らせる可能性があります。

5. 甲状腺機能低下症の治療とAGAへの影響

甲状腺機能低下症の治療にはレボチロキシン（チラーヂンS）などの甲状腺ホルモン補充療法が用いられます。

• 甲状腺ホルモンの補充によって期待できる効果
  • 毛周期が正常化し、抜け毛が減少
  • 血流が改善し、毛母細胞の活性が回復
  • 皮脂バランスが整い、頭皮環境が改善

ただし、AGAの根本的な原因（DHT）を抑制する効果はないため、甲状腺機能低下症を治療してもAGAの進行が止まるわけではありません。
そのため、甲状腺機能の治療と並行して、AGAの治療も検討する必要があります。

結論

甲状腺機能低下症がAGAに及ぼす影響

1. 毛周期の乱れ・血行不良 → AGAを悪化させる
2. DHTの影響が増大 → 5αリダクターゼの活性が上がり、DHTが増加する可能性
3. AGA治療薬（フィナステリド・デュタステリド）の影響 → 甲状腺ホルモンに影響を与える可能性がある
4. 甲状腺ホルモン補充療法はAGAの進行を止めるものではない

対策

• 甲状腺機能低下症を治療することで、AGAの悪化を防ぐことは可能
• AGA治療薬を使用する場合は、甲状腺ホルモンへの影響を考慮して医師と相談する
• 血行改善（頭皮マッサージ・運動・栄養管理）を併用することで、AGAの進行を抑える可能性がある

【結論】 甲状腺機能低下症そのものがAGAの直接の原因ではないが、間接的にAGAを悪化させる可能性が高いため、両方の管理が重要になります。