前立腺疾患と勃起機能の関係
前立腺は膀胱の下に位置し、尿道を取り囲む男性特有の臓器です。精液の一部を分泌し、射精や排尿の調整に関与していますが、前立腺の異常やその治療が勃起不全(ED: Erectile Dysfunction)を引き起こすことがあります。
1. 前立腺と勃起のメカニズム
- 前立腺自体は勃起を直接コントロールしませんが、周囲の神経や血管が勃起に深く関与しています。
- 前立腺周辺には「陰部神経」「自律神経(交感神経・副交感神経)」が走っており、これらが勃起を調節しています。
- また、前立腺の疾患や手術によって血流や神経が損傷すると、EDが起こることがあります。
2. 前立腺疾患によるEDのメカニズム
前立腺疾患には主に 前立腺肥大症(BPH) と 前立腺がん があります。これらの疾患自体や治療がEDの原因になることがあります。
(1) 前立腺肥大症(BPH: Benign Prostatic Hyperplasia)
前立腺が加齢とともに肥大し、尿道を圧迫する疾患。
EDの主な原因
排尿障害によるストレス
- 頻尿・残尿感・夜間尿・排尿困難などの症状が続くと、精神的ストレスや疲労が蓄積し、勃起機能が低下。
神経圧迫による影響
- 肥大した前立腺が陰部神経や自律神経を圧迫し、勃起を妨げることがある。
治療薬の副作用
- α1遮断薬(タムスロシンなど)
→ 前立腺や膀胱の筋肉を弛緩させて排尿を助けるが、射精障害や勃起不全を引き起こすことがある。 - 5α還元酵素阻害薬(デュタステリド、フィナステリド)
→ テストステロンを抑制し、性欲低下やEDを引き起こすことがある。
(2) 前立腺がん
前立腺にできる悪性腫瘍。進行すると骨転移しやすい。
EDの主な原因
がん自体による影響
- 前立腺がんが神経や血管を圧迫すると、勃起が困難になる。
- がんが進行すると、痛みや倦怠感により性欲が低下。
前立腺がんの治療によるED
前立腺全摘除術(根治手術)
- 前立腺と精嚢を摘出するため、精液を作る機能がなくなり、射精は不可能になる(ドライオーガズム)。
- 勃起神経(陰部神経・自律神経)が損傷すると、EDが発生。
- 神経温存手術を行っても、一時的なEDが起こることが多い。
- 術後のリハビリやPDE5阻害薬(バイアグラ)が有効な場合もある。
放射線治療(外照射・小線源療法)
- 前立腺周囲の血管や神経がダメージを受け、勃起が困難になる。
- 放射線の影響は徐々に現れ、数年後にEDが進行することがある。
ホルモン療法(アンドロゲン遮断療法: ADT)
- テストステロン(男性ホルモン)を抑制するため、性欲の低下やEDが起こる。
- 副作用として筋力低下、骨粗鬆症、疲労感も出やすい。
- 治療中はPDE5阻害薬が効きにくいことがある。
3. 前立腺疾患によるEDの治療
前立腺疾患によるEDは、原因によって治療法が異なります。
(1) 生活習慣の改善
- 前立腺肥大症や前立腺がんのリスクを減らすため、適度な運動(ウォーキング・スクワット)を行う。
- 食生活を改善し、抗酸化作用のあるトマト(リコピン)やナッツ類を摂取する。
- 禁煙・減酒を行い、血流を改善する。
(2) 薬物療法
PDE5阻害薬(バイアグラ・シアリスなど)
- 陰茎の血流を改善し、勃起をサポート。
- 手術後の神経回復に伴い、効果が出ることがある。
ホルモン補充療法(テストステロン補充)
- ホルモン療法によるEDの場合、テストステロン補充療法を検討。
- ただし、前立腺がんのリスクがあるため慎重に行う。
(3) リハビリと物理的治療
陰茎リハビリテーション
- PDE5阻害薬を低用量で定期的に服用し、陰茎の血流を維持する(陰茎リハビリ)。
- 真空勃起補助器(VCD: Vacuum Constriction Device)を使用して血流を促す。
(4) 外科的治療(重度のED)
陰茎インプラント(ペニスプロテーゼ)
- 薬やリハビリで効果がない場合、シリコン製のインプラントを陰茎に挿入。
- 機械式(ポンプ操作)と半固型の2種類があり、前立腺がん術後のED患者に選択されることが多い。
4. まとめ
前立腺肥大症(BPH)や前立腺がん自体がEDの原因になることがある。
治療(手術・放射線・ホルモン療法)がEDを引き起こすことも多い。
PDE5阻害薬、ホルモン補充療法、陰茎リハビリなどで回復を試みる。
重度のEDには陰茎インプラントが選択肢となる。
前立腺疾患とEDは密接に関係しているため、医師と相談しながら適切な治療を選択することが重要です。

